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淡いピンク色に支配された世界。 目に映る全ての物が輝きを放っている、幻想的な世界。 あらゆる命あるもの達の声も聴こえない。 ある種隔離されたような牢獄で、僕達は二人だけそこにいた。 対面にいるのは、彼女。 地味でダサくてクロブチメガネのはずの彼女は、キャプテンで皆から一目置かれる存在で歪曲することなく真っ直ぐ輝きに包まれながら立っていた。 彼女は何も言わない。 僕も何も言わない。 何か口をついて出てきた言葉はこの幸福な空間を滅茶苦茶に壊してしまいそうで、だから、何も喋ることができない。 彼女はどこか遠くを見つめていた。 黒くてスラリと伸びる美しい髪を、細くて小さい白い手で優美にかきあげている。 綺麗だった。 どこまでも先を見据える鋭い視線も定規を突っ込んだかのように垂直に生えるピンとした背筋も引き締まった長い足で大地をしっかりと踏みしめるその姿も。 彼女の全てが彼女を彼女たらしめ、彼女を創りあげている。 それに比べ、僕は一体どこに立っているんだろう? 他人の目線を気にするくせに身なりを繕うこともせずいつも下を向いてばかりで情けなくうなだれる僕は。 かけ離れていた。 彼女は遠い。 それ以前にどこにも立つことが出来ない僕とは。 決定的に。 対面どころじゃない。 彼女と対面しているのは、彼女が見つめるその先。 僕じゃない。 そしてそれに気付いた時にはもう遅かった。 急速に音を立てて崩れていく世界。 彼女のいる世界が見えなくなる。 僕の周りには闇しかない。 僕はどこに立っているんだ?
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