正される記憶

5/13
前へ
/60ページ
次へ
そして翌日、紫子と一緒に通う。 俺が殺めてしまう前の紫子と。 彼女は精神が崩壊しなかったらどうなるのだろう。 黒澤が手を出さないで普通に暮らしていたら。 「殺されて逃げるか殺されないで戦うか」 「え?」 「いや、別に」 「今の名言みたいだよね」 「そうか?」 「うん」 殺されないで戦うというのは生きて戦うか、と比較できない。 生きることが許されてない俺には殺されないで、と表現するしかない。 所詮、人生とはそんなものだ。 与えられたチャンスすら無駄に等しい。 「難しい顔してないで別の話しようよ」 「別の話というと?」 「じゃあなんで車は飛ばないの?」 「空を走るなんて無理だ。技術の前に理論が確立していない」 「例えば地面に磁石を埋めて車の下にもつけるの」 「重いと浮かないし軽いと浮きすぎるな」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加