任務

9/10
前へ
/296ページ
次へ
3人は目的地に向かい、生い茂る木々の隙間を考えられない程の早さで移動している。 任務地の最前線であるライムコ平野までは、武闘士の足で約1日程度掛かる。一般人なら3日以上。 テリヤキはオッシー、モエコとチームを組んで初めての任務である。オッシーとは過去数回手合わせをした事があるテリヤキだが、モエコとは一度も無い・・・ 「足を引っ張らないで下さいね」 先程モエコに言われた言葉をテリヤキは思い出した。中級武闘士と下級武闘士の間には実力もそうだが、任務経験にも開きがある。そんな事はテリヤキにも分かっていた。だが悔しかった。 そんなテリヤキの心中を見透かしたかの様にオッシーが、 「焦りは禁物。主は自分のやれる事を精一杯するのだ」 と、声を掛けた。そんなオッシーの言葉に無言でテリヤキが頷く。モエコは二人のやり取りをチラリと横目で見ていたが、突然両手で印を結び、小さな声で呪(しゅ)を唱え始めた。 それに気付いたオッシーとテリヤキは神経を集中させ辺りに気を配る。 「2時方向、750メートル先に敵の気が2つ有ります。それと10時方向、900メートル先には3つ・・・ 気の強さは下級武闘士から中級武闘士程の者だけです」 正直、テリヤキにはまったくわからなかったし、神経を集中させてはいるが、そこまで詳しくは把握出来ない。多分、上級武闘士のオッシーも、モエコ程は把握出来ていない。そう考えると改めてテリヤキはモエコの能力の高さに驚いた。 「モエコの察知能力は、根虎衆でも1、2を争う実力・・・いくら拙者やバルクレーが頑張ろうが、足元にも及ばぬよ」 オッシーはテリヤキにモエコの察知能力の高さを教えた。テリヤキは驚いた眼差しでモエコを見ている。 そんなテリヤキを尻目に、モエコは呪を唱え、印を結んで気を放った。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加