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その瞬間、モエコの姿が消えた・・・
モエコの姿を見失ったテリヤキが辺りを見回した。そんなテリヤキにオッシーが、
「2時の方向を見ろ、テリヤキ」
そう言われた方向を見ると、テリヤキ達からかなり離れた2時の方向にモエコの姿が見えた。
「神駆け(しんかけ)を使ったのか・・・」
武闘士の術の一つ【神駆け】。この術を使う事で、一時的に動作が速くなる。武闘士の扱える気の大きさ、レベルによって、その使える時間が変わる。
───凄い
テリヤキは素直にそう思った。今のテリヤキの実力で神駆けを使っても一瞬であそこまで行くのは難しい・・・
武闘士の実力を測るには、相手の術と自分の術とを比べて見れば一番分りやすい。
さっきの察知能力と神駆けを見たテリヤキはモエコの実力が術を見て分かったのだ。
「2時方向の二人はモエコに任せるとして、10時方向の3人はテリヤキ任せるぞ」
テリヤキの隣に並んだオッシーは、真っ直ぐ前を向いたまま手短に話した。
「───了解。」
「拙者はこのまま真っ直ぐに気を発しながら突き進む。相手はまだこちらに気付いてはいないからな。一人と思わせる。だから主は焦らずに、限り無く気を殺して行け」
そう言ったオッシーの体からは、さっきまで消していた気が溢れだしている。
それと同時にテリヤキの気が消える。まるで周りの木々と同化したかの様に・・・
気と言うものは、停止している状態だと完全に消してしまうのは訳が無い。しかし、動きながらと言うと話しは別である。動きながら気を完全に消すと言うのは上級武闘士でも至難の技で、通常よりも動作が鈍くなる。
それをテリヤキは何事もなく行っている。
『───うむ、気の使い方が上手い。まだテリヤキは気付いておらぬが、ここまで上手く気を使うものは下級・・・否、中級武闘士でもおらぬな』
ちらりとテリヤキの方向を見たオッシーは、この若い武闘士の能力の底の深さに感心していた。
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