止まない雨

2/3
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
雨が降っている。しとしとと静かに降っている。この様に降る雨は別に珍しい事ではない。 ただ・・・ここ数ヶ月の間、一日たりとも雨が止む日が無く降り続けているという事以外を除いて・・・ それはこの国では有り得ない事である。 何故なら、この国はどちらかと言うと乾燥した気候であり、雨が降ること自体がそう多くないからだ。 また止む事の無い雨は色々な事に影響を与えていた。洗濯物が乾かない、畑の作物が育たない、子供達は外で遊べずストレスが溜まり家の中で暴れる。それは子供達だけに限られた話しではなく、ストレスが溜まって苛々しているのは大人達も同じであった。この国の人間達が皆、この止む事の無い長雨のせいで精神が参っているのである。 そして思わぬ所にも弊害が出た・・・ 下水道が溢れてきたのである。元々雨の少ないこの国の下水道は、この様に長く雨が降る事を想定して作られていなかった。それが引き金となり、国の至る所で感染症等の病気が多発した。 そんな雨の中を傘もささずに歩く人いた。年の頃は15~16。左目下に5センチ程の傷がある。長い赤毛の髪は雨に濡れ、額に張り付き、濡れた衣服が体にまとわりついている。 しかし少年はまったくそれを気にする素振りを見せず、ただひたすら黙々と歩いている。 その眼光は鋭く、何か深く思い込んでいる様子が伝わってくる。生憎、この空模様の為に人が通る事が無いが、誰がみても尋常で無い様子が一目で分かる。 歩き続けていた少年がピタリと足を止めて、辺りを慎重に見回し屈み込んだ。 屈み込んだ所に、黒く鈍い光を放つマンホールが有り、少年は一気にそのマンホールの蓋を開け、素早くその中に滑り込んでいった。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!