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暗く湿った道が続いている。初めてこの道を通る者ならば、必ず尻込みしそうな気味悪さがある。
しかし少年は何度もその道を往き来している様子であり、灯りも何も持っていないのに先程より早い足取りで歩いている。
暫く進んでいると、少年の目の前に一人の男が現れた。その男は一目で少年よりも年齢が上という事がわかる。また少年と対照的に髪の毛は短く坊主頭で、苦虫を噛んだような顔をしていた。
「─── オッシーか」
少年は闇の中に立っている坊主頭の男に声を掛けた。オッシーと呼ばれたその男は少年に数歩近付いた。
オッシーは修験道者の様な格好をしており、捲った袖からは丸太の様な両腕が見えており、手には重そうな鉄杖を持っている。
「うむ。少々厄介な事になったようだ・・・」
顔中に生えている髭を触りながらオッシーは、苦虫を噛んだような顔を、さらに険しくしながら少年に聞こえる位の声で答えた。
「あぁ・・・まさか、奴があちら側に走るとは思わなかったよ」
少年もオッシーと同じ様に険しい表情になっている。二人の間に重い空気が流れていた。聞こえて来るのは水滴が落ちて響く音だけである。
「取り敢えず、親方の所に戻ろうか?この事を報告しなければならないから・・・」
沈黙を破る様に少年はそう言うと、遅れを取り戻すかの様に今度は走り出した。オッシーもその後に続く。驚く事に二人共、足音の一つも立てる事無く、常人よりも全然早く走っている。
そんな二人の目の前に、半分壊れかけている様なぼろぼろの扉が現れた。その扉の前で止まった少年とオッシーは、変則的な拍子で扉をノックした。
すると扉の隙間から人の目が見え少年とオッシーの姿を確認した。
ギギギギギ
重い軋んだ音を立て扉が開くと中から、少年と同じ位の年の頃の少女が出てきて二人を中に招き入れた。
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