終章

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*  彼らが港町ユーノに着いたのは正午を少し回った頃で、乗る予定の船が出航するまで後二十分程というぎりぎりの時間だった。  ユーノの入り口で馬車を降り、船着場まである結構な距離を全力疾走したエナは上がった息を整えながら辺りを見回した。  昼時だからなのか人は疎らで見通しは良いはずだというのにシャードらしき人影は見当たらない。  「居ないねえ。ま、ジストさん的には野郎が増えても嬉しくないし、いいんだけどね。あ、これはい、乗船券」  そう言いながらもチケット売り場で四枚の乗船券を購入してきたジストの息は微塵もあがっておらず、エナはその体力差を内心羨ましく思った。  「や。来るよ、シャードは。例え一緒に行かないとしても、此処には来る」  乗船券を受け取りながらエナは自信満々に言い切った。  「なんでそんなことがわかンだよ?」  これまた息のあがっていないゼルが訝しむ。  「シャードはもう逃げること、選ばないから。出した結論を伝えに来るはずなんだ」  自身の罪を受け入れることも開き直ることも出来ずにいた死神はもう居ない。居るのは、罪を受け入れたシャードという真面目な男。区切りをつけねばと長年生きてきた船も仲間も手放した男。  「……それ言うなら、遅刻しそうなタイプでもねェんだけどな」  頭を掻くゼルの言葉に、それもそうだとエナは頷いた。  「やっぱ来ないんじゃないのお?」  もういいじゃん、さっさと行こうよとジストが急かす。  エナは、むぅ、と唸った。  「……迷子放送、かけてもらう……てのは?」  上目遣いで言うエナにゼルが勢いよく突っ込んだ。  「逆に出てこれねェよ!」  大の男が港中に響き渡る拡声器で迷子放送を掛けられるなど、末代までの恥もよいところだ。  「じゃあ、マタタビ撒(マ)いてみ……」  「猫かラフしか反応しねェわ!!」  「だから、ラフは犬っつってんでしょ!!」  名前に反応したラファエルがにゃあと鳴き、シャードがマタタビで寄ってくる想像でもしたのかジストが喉を鳴らして笑ったその時。
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