155人が本棚に入れています
本棚に追加
きぃん、と拡声器の電源を入れる高い音が鳴ったかと思うと、幾多の声が海に、空に響き渡る。
「お頭ぁぁっ!」
シャードを呼ぶ多くの声が拡声器の音を割る。
視界の隅で動いた人影に、ふとシャードを見遣ると彼は船から目を離さないまま、呆然とした表情と躊躇いがちな足取りで一歩、船の桟に近づきそこに手を置いた。その手は少し震えている。
「何故、此処に……一般の港に来ては海軍が……」
呟きにさえならぬような小さな声が風に乗ることなく消えていく。
「お頭! 聞こえますか、お頭ぁ!」
港町ユーノの住人にすら届くような大音量だ。聞こえぬわけがない。
だがシャードは船を見つめ続けるだけで、その声達に何の反応も返さない。否、返せないのだろう。その驚愕は目を見ているだけで想像に容易い。
影団の船はぐんぐんと速度を上げ、エナ達が乗る帆船へと距離を詰める。
口々に何かを言い続けていた団員達をランガードが制し、辺りは一瞬静寂に包まれる。
最初のコメントを投稿しよう!