終章

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 「自分に出来ること探して、ゼルへの償いから始めようって思ったんだろうけど、償いは隷属じゃない。あんたの罪を本当に赦すのはゼルじゃない。シャードがこれから幸せにした人たちが、赦すんだ」  エナはシャードの両手を掴み、握り締めた。  「シャードだって、幸せになっていいんだよ」  「エナ殿……」  シャードはそれきり言葉を失い、代わりにエナの手を握り返した。  彼の手は温かかった。そして、優しかった。  「はぁい、そこまで!」  温もりを共有するその手をずかずかと歩み寄ってきたジストが勢いのあるチョップで断ち切った。  「ほうら、そうと決まったらさっさと行かないと海軍が来ちゃうよ? 面倒に巻き込まれるのは御免だからな。さっさと行っちゃって」  言い方としては酷いものだが、じきに海軍が来るのは事実だ。もうとっくにユーノに駐屯している海軍に連絡が入っているはずだから。  「……だが、行くと言えども……」  「おーい! 聞こえっかー!?」  突如、ゼルが声を張り上げた。余りの大声にエナは思わず耳を塞ぐ。  拡声器を通して未だにシャードを求めていた団員にまでその声が届くのだ。近くで聞いていたら耳がおかしくなってしまう。  静かになった団員達に。  「今からアンタんとこのアタマがそっち行くかンな!」  そう言い置いたゼルはエナを振り返り、にやりと笑った。  その笑顔でエナは全てを察知し、似たような笑みを返す。  「アンタ、泳げるよな?」  シャードに投げた問いに彼は状況の読めぬ中「ああ、まあ」と頷いた。  「じゃ、そゆことで!」  エナとゼルが声を合わせて、その行動に出た。  「な、何をするつもりだと……!」  狼狽するシャードの体が宙に浮く。  そのまま体はエナとゼルの手を離れ、海の中へ。  「頑張って泳げー!」  高くあがった飛沫に向かってエナは手を振りながら叫んだ。  海に叩き落され、海面に顔を出したシャードは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていて、エナ達の笑いを誘う。
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