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「まさかあの人に妹がいたなんてなぁ……」
感慨深そうに黒木は言う。
「やっぱり仲が良かったんですか? 毎日お兄ちゃんが黒木君のこと言ってたから……」
「ん、まあ、な。仲が良いっていうか……、あの人には世話になったよ。俺も、藍もな」
そう言って藍と顔を見合わせた。彼女は深く頷いて、口を開く。
「私、ちょっと前まで『魔力後遺傷』だったんだけど……、守屋さんは全然気にせずに接してくれて……」
「そうだったんですか?」
鈴姫が意外そうな顔をして訊ねる。藍が頷くと、今度は黒木が応えた。
「実はというとお前の親父さんが書いた本が、『魔力後遺傷』の治療法発見に一役かっていてな。学会で発表した時も挨拶したんだ」
「やっぱりすごい人なんだ……」
やがて俯いてしまった鈴姫を見て、その姿は守屋亮太に通ずる所があると、黒木は思った。
守屋兄妹の父親は、稀代の天才摩導技師で、その子供となれば、周囲からの期待と重圧は計り知れないものがある。黒木もそれは身をもって体験している。
かつて、守屋亮太が言った言葉を思い出した。
──努力してるからな、人よりも。
自分はどうだろうかと、黒木は不意に自身を省みる。努力は足りていたか。あの時こうすればよかったんじゃないだろうか。
自分は期待に応えられているだろうか。
時々そんなことを思っては、日々の努力に精を出すのだ。
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