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中庭には主に花壇などがある。ガーデニング部という部活動があるためらしいが、成果が出るのが遅い。それがガーデニングや庭いじりだ。たかが三年で何ができるのか……、と最初は黒木は思っていた。
しかし、ガーデニング部なんてものを作る輩に経済力がない筈がなく、外からあるものを植え込んで完成させているのだった。
それはもう見事としか言えない。今でこそ夜でよく見えないが、彩り豊かな薔薇たちが芳しい香りをたちこませている。
中でも有名なのは、青い薔薇だろう。
青、というものは自然界でも珍しい。薔薇には元々、青色は存在しなかったのだが、品種改良の末、造り出された。
それが今、この中庭に咲き乱れている。
「嗅ぎ慣れてないからかな。薔薇の匂いってあまり好きじゃないんだよ」
黒木はロマンも甲斐性にも欠ける一言を言うと、藍は信じられないという顔をした。
「あんなに綺麗で、こんなに良い香りなのに……」
「まあ、この学校に居る以上、そのうち嫌でも慣れる」
黒木はそう言って苦笑する。
「……都城っていったっけ。ガーデニング部の」
黒木は思い出したように言う。
「そう。三年生の都城麻里子先輩。すっごいお金持ちで、才色兼備って感じらしいよ」
世俗的で自由奔放なお嬢様。黒木はそんなイメージを受けずにはいられなかったが、気にしないことにした。
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