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咲き乱れる薔薇たちを尻目に、運動や遊戯目的にしようされる芝生の上に、奇妙な白線が引かれていた。
「これがミステリーサークルとやらか。でかいっつうか、無駄なことしたな」
延々と端の方まで続く白線を見て、黒木は呆然とした。
「何かのメッセージかもね。よくわかんないけど」
「……やっぱり昼間のうちに屋上に言っておくべきだったか。これ、どう見ても文字だよ。多分、七文字くらい」
いったい誰に何をどうして宛てたメッセージなのかは、あえてこの場では考えないようにした。考えても、どうせ答えなどでないからだ。
「次は、旧校舎だっけ?」
「いや、違うと思う。旧校舎なんて聞いたことないし……、旧第三倉庫と勘違いしてるんじゃないかな。城ヶ崎生徒会長がさ」
ふむ、と悩みこんだ黒木は、そのまま芝生の上に寝転んだ。
「少し星でも眺めてから行くかね」
「あれ、天体観測の趣味なんてあったっけ?」
「ないけど……、昔は父さんとよく見に行ってた」
どことなく寂しげな表情を見せた黒木は、満天の星空をぼんやりと眺めた。
その後、彼は立ち上がり、旧第三倉庫まで歩き始めた。置いていかれそうになった藍は泣きそうになりながらもついていく。
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