呪いの人形

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そのうち金をせびられるようになった。 断ると殴られた。 腕時計も盗られた。 イジメは入学してから、半年間続いている。 でも僕は、先生や親にチクったりはしてない。 報復も怖かったが、しかしそれよりも、この、情けない事実を親に知られたくなかった。 同じクラスの生徒らは当然、全員知っている。 しかし多分、誰もチクらない。 それは、郷田の凶暴さを知っているからだ。 入学一週間後、郷田は、隣のクラスの見た目ヤンキーをボコボコにして、早速、停学をくらっている。 それで、郷田の名が学校中に知れわたった。 だから誰も、郷田に関わりたくない。 イジメを目の前にしても、皆、知らんぷりである。 とにかく三年。 三年我慢すれば良いのだ。 卒業すれば、この呪縛から逃れられる。 僕は自分にそう言い聞かせた。 そんな毎日が続いた、ある日の帰宅途中。 いつもの道を自転車で帰っていると、老婆が道端に、パイプ椅子を置き、座っていた。 下を向いて寝てるように見えた。 ひなたぼっこでもしているのだろう。 たいして気にせず、その前を通り過ぎようとした時、老婆はいきなり顔を上げた。
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