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それからしばらくを経たある日、私が大切な事を一つ失念していたのだと気付いた。
思えば、最初にその可能性を考慮しておくべきだったのだ。この少女が、自分とは違う存在なのだと認識していたのが失敗の始まりだ。
つわりに気づけなかったのも、許しがたいミスと言う他ない。今では少女の腹部が膨らみ始め、最早誰の目にも何が起きたか明らかである。
少女は……妊娠をしていたのだ。
誰の子か? など問うだけ無意味な事。薄汚い畜生共の遺伝子である事に相違が無いのだから。
気付いたその瞬間に私は少女を呼び寄せ、薬で眠らせた。膣に鉗子を入れると、中にいるまだ小さな胎児を引きずり出す。
そして原型の残らぬように胎児を切り刻んだ後にそれを食して、少女の子宮も摘出して食らった。
少女は、この代にして既に完成されているのだ。一代限りの泡沫のアートなのだ。
子供などという劣化コピーは、この少女には必要ない。
そんなものが世界に存在しては、少女の価値を貶める事になる。
暫く少女はまた寝たきりになってしまったが、幸いその後の経過は芳しく、再び起きて私に食事をねだる様になった。
食事を零す癖は直っていないが、猫撫で声を出しながら私に頭を向ける事はしなくなった。
子宮の摘出によって性欲が断絶される訳ではないが、おそらく少女の中で、一つのけじめがついたのだろう。
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