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仕事が休みの日、私は一日中少女の傍に居た。
一秒毎に、少女が美しくなってゆく様な気がした。
少女の服を脱がせ、体を隅から隅まで綺麗に拭ってやる。
白く木目の細かい肌には、染みの一つも無い。診療所裏で付けられたらしき複数の歯型も、今では治って消えている。
綺麗にする事と温める事以外に、私は少女の肌に触れなかった。過剰に触れてしまっては、少女が汚れてしまうと思ったのだ。
必要以上に少女の肌に触れていたいという気持ちと、私如きが少女に踏み込む事は許されないのだという強迫観念。
板ばさみの状態で、私は毎日悩み苦しんでいた。しかしそれは、何故だか心地の良い苦しみだった。
私は、丹精込めて作った栄養剤を与えてやった。特製の栄養剤は、少女に瑞々しい血色を維持させてくれた。
凝り固まった関節を、一つ一つ丁寧に解してやった。もしも運動をしようとしたのなら、今すぐにでもそれが出来るだろう。
――何にしても、少女の生涯はここで寝返りを打つ事で終わるのだが。
とても、不思議な気分だった。
私も一介の男だが、これだけ美しい少女に触れていても一切の情欲が沸かない。
少女を身体を清めているつもりが、逆に私の心が洗われている様であり、とても神聖な心持ちになれた。
少女の身体を温めているつもりが、逆に私の心が温もりに満ちて行き、とても穏やかな心持ちになれた。
現に私は、少女に触れたり少女の事を考えていると一切の煩悩が消えて行くのだ。
目を開かぬ少女を見て、弱々しく脈を打つ少女の身体に触れていると、これ以上の無い程に満たされて行く自分を感じる事が出来た。
性欲など忘れて久しい。それ以上の快楽を、私は少女の中に見出しているから。
――時々、恐ろしくもなる。
私の目の前にいる少女は、本当に人間なのだろうか?
私が相手にしているのは、精巧に作られた人形なのではないか?
いや、情欲すらも皆無なら、もっと畏怖し敬うべき偉大なる生物なのではないか……?
そう思うと酷く不安になるが、それと同時に自分が崇高な存在に近づいている気がした。
私が、メスを抱く事しか考えぬ畜生とは一線を画す存在になった様な、そんな錯覚がするのだ。
もう私は女など抱かない。その必要が無い。私は既に、身も心も満たされているのだから。
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