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雲一つとない空は、どこまでも青かった。
少年が桃色として咲き誇る桜の木に見とれていると、不意に背中に軽い衝撃を受ける。
振り返るとそこには、少年の肩ほどの背丈である海色の瞳をした少女が、若干不機嫌そうな様子で少年のブレザーを引っ張っている姿があった。
「クロ、なんで“ごーかくはっぴょん”見に行かない?」
「んー、だってさ、凄く混んでるじゃない? 僕、人込みって苦手で。あとメリル、“ごーかくはっぴょん”じゃないから。正しくは“ごうかくはっぴょう”。分かった?」
「微妙」と、なにが微妙なのかそう答えるメリル。
さっきから幾度となく教えているのだが、結局は今のように間違えてしまうのである。
そんなわけでクロと呼ばれた少年、本名クロウは、弱々しく苦笑するしかないのだった。
二人は、王国全土に数多とある魔法学園の中でも最高ランクの高等魔法教育機関、“ラピスマグス”の合格発表の場に来ている。
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