2 気まぐれと出会い

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 配線とコンピュータでごちゃごちゃとしている薄暗い部屋の中央で、顔の左半分を長い前髪で隠した青年は、独りコンソールを叩いていた。現在主流であるGUIではなくCUIを用いているモニターには、一見しただけでは何を書いてあるのか分からない文字列が次々に現れている。  青年はローテクを好んでいた。一昔前の技法で最先端の技術をあしらい、目的を達成する。その瞬間が快感だった。――単に周りと合わせたくない、というのもあるが。  だから意識は常に現実に。電子空間に意識を置き、感覚的に操作出来るダイブを好まない。  ……ただ、今日はちょっとダイブをしようかな、と思っていた。普段やらないだけでダイブが出来る環境は取り揃えてある。ごくたまにだが、ダイブをしたくなる時があるからだ。言ってしまえば気まぐれに過ぎない。
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