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そこからは冷静だった。
バーのカウンターには、カクテルを作る為の果物ナイフがある。フラフラとそこに歩き始めて、何度か止められたような気がする。
でも…私の瞳には、ナイフしか映っていない。
「ミチル!?」
「ミチルちゃん!」
「オィ!!」
誰の声?ソラ?イオリさん?キョウさん?
「あぁぁぁぁぁ!!!」
握りしめたナイフを振りかざし、左手首目掛けて下ろし
散った……。
……赤い、赤い、
花びらが。
綺麗だと思った。
スローモーションのようにゆっくりと目の前に散らばる赤が。
よかったって思う。
身体にあるものが、黒くなくて。
でも、何故だろう。
痛くない。
遂に、神経まで可笑しくなったんだって思った。
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