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「いいか」
「……」
「子供を捨てる親はいる。否定は出来ねぇ」
「……」
「でもな。ミチルの親父が言った事が本気だと思うか?」
「……」
綺麗になった部屋。
お酒の瓶一つない台所と、煙草の匂いがしなくなった空気と、
「なぁ、ミチル」
砂埃に汚れた作業衣。
「言葉は大事だ。でも、それが本人の本心とは限らない」
テーブルに飾られた家族写真。
心のどこかで、気付いていたはずだった。でも、父親の言葉でその気付いた事さえバラバラと崩れ落ちてしまった。そのピースを拾い、当て嵌めるようにキョウさんは静かに諭してくれる。
流れるものは、涙なのか、キョウさんの血なのかわからない。
けれど、とても熱い。
「落ち着け、な」
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