32.最期のメッセージ

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夕飯の支度を手伝っていた私に機関銃の如く話しかけてくるお母さんの瞳は時折、涙を浮かべては気付かれないように拭い、そして笑う。 肩に手を添えて、“無理しないで”って微笑むと、やっと涙は頬を通過して床に弾けた。 泣き崩れたお母さんを両手でしっかり抱きしめては、「ソラなら大丈夫」って何度も呟いたけど、その台詞は私自身に言い聞かせているような気がした。 お母さんを寝室まで運び、泣き疲れるまで側にいてあげた。何度も「ごめんね」と呟きながら…。よく見ると目の下は紫色になっていて、ずっと眠れずにいたのだと実感した。だから余計に泣き疲れて眠るお母さんにホッとする。 そのまま隣のソラの部屋へ向かい、何も変わらないあの場所へと視線を向ける。 この世の全ての幸せを手にしたかのように微笑むソラと、ソラの命を繋いだハルの写真。 そっとその写真に触れては思う。何が違うのだろう。この気持ちに。私だってハルと同じ位にソラに生きていて欲しいって思うのに何故伝わらないだろう。
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