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すっとカナタは立ち上がり、夕夏に向かって小さく呟く。
『もう、夕夏さんは傷付かなくていいですよ。後はあたしがどうにかしますから…』
『えっ…今何て?』
目元が腫れ、見えづらそうにカナタ見つめ、口からは血が出ていた夕夏。
カナタが放った言葉の意味が分からなかった夕夏は、放心状態だった。
『あ…あんた達、殴るならあたしを殴りなよ』
『弱そうなお嬢ちゃんが何?喧嘩もしたことないヤツが、邪魔なんだよ。そいつに用があんだから、どけ』
―ドンッ―
カナタは、高校生に肩を押され、一瞬よろめく。
しかし、体勢を直し、再び高校生達の前に立ち塞がる。
『だから、あたしを殴れよ。あたしは、もう傷だらけなんだ…また傷が増えたって一緒。ほら、骨だって折っていいさ。さぁ、この傷みたいしてみろよ』
『何、てめえ……えっ?』
カナタは、着ていた長袖を捲り上げ、お腹や腕を見せる。
そこには、どす黒いアザやすり傷が体中に浮かび上がっていた。
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