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『助けて…助けてぇ…誰か……』
夜中の雨の降る街に悲痛な声が響き渡る。
しかし、助けを求める声は雨にかき消され、人を求めて商店街に入るが、人通りはほとんどなく、カナタ以外の人間は誰もいなかった。
血に染まった洋服を身にまとい、足を引き摺りながら、ゆっくりと歩く。冷たい雨に打たれ、体力も限界に近付いていた。
後頭部の痛みと闘いながら、歩き続けていたが、はっと思い出したように自分の服のポケットを探る。
『携帯…無いんだ』
カナタは、絶望した……。
家を飛び出すときに体ひとつで逃げてきたため、財布も携帯も全て手元にはなかった。
一筋の光が消えた瞬間だった。
体ももう動かない。
シャッターの閉まった商店街の白い灯りが自分の孤独さ、惨めさを強調するかのように、カナタの心に暗闇がじんわりと広がっていった。
『このまま死んじゃうのかなぁ…あたし。…寒いよぉ…』
シャッター側に横になってうずくまり、小さく膝を抱えた。
『もう、限界。ひっく…ひっく…』
涙が溢れ出す。もう生きることに疲れたカナタは、自分がこのまま冷たくなって朝を迎えることを覚悟した。
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