古びた時計は重く針を動かす

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1人で生きていく決心をしたカナタは、自分の人生をもう一度やり直すつもりで、くじを見つめる。   カナタは、別人になれる本当の意味を知らないままくじを引き、三角形に半分に折られた紙を開くと、真っ赤な字で数字の“1”と書いてあった。 『一等、大当たり~』 男は、カランカランと鐘を大きく鳴らし、そう大声で叫んだ。  『あなたは、運の良いお人だ。今回のくじの中で最高ランクですよ。依頼主の方もきっと喜ばれると思います』 『あの……、依頼主とかランクとか何のことですか?』 『フフフ…。ご依頼主様は様々な方がおられますよ。サラリーマンから始まり、そしてアイドルまで。貴女が引いたくじは“神童 護”(しんどう まもる)の人生と入れ替われる権利ですよ』 『えっ?!…どうして??』 神童 護とは、アイドルとしてデビューし、役者としても活躍する23歳、今をときめく人気アイドル、男性。 『あたしが神童 護に?!しかも、男ですよ。それに人生を入れ替われるってどういう意味ですか?』 『つまり、あなたが神童 護として生きて行くということです。そして、相川カナタを護さんが生きて行くということですね』 カナタは、意味が分からなかった。
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