古びた時計は重く針を動かす

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『でも、何でくじの中に神童 護の人生と入れ替われる権利なんて入ってるんですか?』 『私は、ただのくじ引き屋ではございませんよ。人間の人生を入れ替えるくじ専門ですので』 『―?!―』 そんな人間の人生を扱うくじがこの世の中あったなんて、信じられなかった。 驚きを越えて、恐怖が襲って来る。 声を震わせながら、男に問う。 『でも、…ど…どうっ…あの、どうして、人間の人生を扱う専門なんですか?』 動揺を隠せないカナタに男は高笑いをして、嘲笑った。 『あははは。だって、ただのくじ引き屋なんて、つまらないでしょう?人間の人生は、高額で取り引きされ、沢山の報酬を頂けますから、辞められないのですよ』 男は、軽快な口調で話を続けた。 『それだけ人間は、自分の人生がよっぽど嫌なんでしょうね。自分の人生を金で売って、入れ替われる相手を探しているんですから、哀れな者ですよね。人間は、死ぬ勇気はないが、自分の人生は嫌だなんて、本当に馬鹿馬鹿しい話ですよね』 男の発する言葉の端々に“―人間は―”というフレーズが出てくるが、くじ引き屋の男は、人間ではないのか? 『くじ引き屋さん、あなたは、人間ですか?』 『私ですか?っはははは。私は、人という生き物ではありませんよ。私は、人の心の“闇”や“欲望”、“嫉妬”が集まって人の形を形成しているだけですよ』 さらりと言ったその言葉にカナタは、震えが止まらなくなった。
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