古びた時計は重く針を動かす

4/21
前へ
/365ページ
次へ
 夕夏との初めての出逢いは、中学1年生の始め、まだ友達もあまりいなかったくらい頃だった。 カナタの父親の暴力は既に始まっており、顔以外はアザだらけで傷まみれ。 足の骨折をして、右足にはギブスが。 学校帰りに松葉杖でカナタが家路に向かっていると、誰かが勢い良くぶつかって来た。 勢いに負けて、カナタは松葉杖を持ったまま尻もちをついてしまう。 ―ドンッ―  『痛たたた…』 足とお尻の痛む部分を擦りながら、ぶつかって来た相手を見上げると、当時同じ中学1年生だった夕夏がそこに立っていた。  『あっ…ごめん。大丈夫やったか?ほらっ』 夕夏の風貌は、ポニーテール、顔には絆創膏がちらほら目立ち、短いスカートに腕を捲り上げた制服。 まさにヤンキー。 そんな雰囲気を漂わせていた。 しかし、風貌とは違い、手を差し出しカナタを引っ張り上げた。
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

936人が本棚に入れています
本棚に追加