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私が挑発してやっても、奴はまだ動かずに居る。
奴を躊躇わせているものは何だ?
武士道、とかいうやつか。
下らん。
しばらく睨みあった後、ふぅ、と息をつく。
「…やる気が失せた。」
私が殺気を収めると、奴は怪訝そうな顔をした。
「腑抜けを相手にしても何の意味もない。
これくらい手を抜いてやれば、子供よりは楽しめるかと思ったが…期待ハズレだな。」
「……驕りは、人を弱くする。そんな事では、いつか斬られて死ぬ事になるぞ。」
斬られる?
私が?
有り得ない。
私は笑いたいのをこらえきれなかった。
「…ククッ……アハハハハハッ!
私が斬られる、だと?有り得ない。」
私は一通り笑い、ようやく収まってくると奴を見て言い放った。
「貴様は驕り、と言ったな。残念だがそれは間違いだ。
驕りではなく、真実。
さっきの太刀筋で分かる。貴様は、私の知る訓練を受けた餓鬼達よりもずっと弱い。」
「何……?」
「そうだな、勝っているものがあるとすれば、それは筋力くらいか?」
私の知る餓鬼共。
あの家にいる子供は、歩けるようになるとすぐに訓練を受ける。
奴は、十歳にも満たないくらいの子供と同格。
隊長が、聞いて呆れる。
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