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そう言って差し出されたのは、小さな琥珀のペンダントだった。
「…これは?」
「お守りです!
前にアンティークショップで見つけて、思わず買っちゃったんですけど……。
……私、あんまり似合わないんです、この色。
でも貴女なら似合うと思うし、お礼の意味も含めて貰ってくれませんか?」
私は迷った。
普通なら断る所なのだろうが、そのペンダントには妙に人を引き付ける所があるらしく、目が離せなかった。
「…わかりました。では頂いておきます。」
別段断る理由も無かった私は、ペンダントを受け取った。
「受けとってもらえて良かったです。
それじゃ、私はこれで。
本当にありがとうございました!」
彼女はそう言って、改札へ向かって走って行った。
私もすぐに踵を返す。
貰ったペンダントを光にかざしてみた。
琥珀が日の光を受けて煌めく様子は、何とも言えず美しく、見とれてしまっていた。
その直後。
私は、消えた。
私は気付かなかったのだ。
走って行った筈の彼女がこちらを振り返り、
「…人が生きる事には、必ず意味があるの。
彼等に会って、その意味を見つけなさい。
どうか、貴女が向こうで誤った道を選ばぬよう……。」
……こう、呟いた事を。
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