運命の日

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 小さな羽根の生えた子供がお辞儀をしている。 「……君は?」  とりあえず、この質問からだろう。 「私はヴェルと申します。職業は天使ですね」  少しおどけてみせたヴェルの笑顔は本当に屈託がなく吸い込まれそうな透き通ったものだった。  そんな顔を 呆然とただ眺めているだけの俺に焦ったのか 「ほんとですから! ほら、ちゃんと羽根が生えてるでしょ?!」 と慌てて背を向けるヴェル。  自分が天使だということを信じてもらえてないと思ったのだろう。 「……で、その……どうして、僕のところに天使の君が来たの?」  僕の口から『天使』という単語が出てくるやいなや、自分の存在が認められたと思い、安心したのかゆっくりと僕の方に向き直って、自分がやってきた理由を静かに語り始めた。
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