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日付が変わる頃、沙希と翔は禅のアパートを後にした。
禅は相変わらずギターをいじっていたが、沙希たちが悩んでいると尋ねられなくても的確に説明をした。
「しっかし、転校してきた頃に比べて随分変わったな」
翔の言葉に沙希はニコニコして頷いた。
「そうだよね。……フフフ、なんか嬉しいなぁ」
「だな」
2人は笑いながら歩いていると、翔がポツリと言った。
「勉強ちゃんと見てくれるしさ、やっぱりホントはいい奴なんだよな。……それが人間嫌いになるなんて何があったんだろうな」
その言葉に、沙希は翔の背中をポンポンと叩いて言った。
「それは禅が話してくれるのを待つんでしょ。わたしたちは禅を信じて待つだけだよ」
「……だな」
そして2人は誰もいない静かな夜道を、
確かな足どりでゆっくりと歩いていった。
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