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「じゃあ禅の知り合いじゃないのかな?」
沙希が尋ねると、禅はチラッと沙希を見てから視線を正面に向けた。
「マサさんはけっこういい加減だからわかんないな。でも……知り合いじゃないほうがいい」
なんで?
沙希はそう尋ねようとして禅を見た。
しかしその言葉は出なかった。
禅が歯を食いしばって目を細めていたから。
そしてその目は悲しげで、ほんの少し涙が溜まっていたから。
「ぜ――」
「禅!」
沙希が禅の目が気になって尋ねようとしたところでマサがやってきた。
「あぁ、沙希ちゃんもこんちわ。悪いけど禅借りるよ」
「え?あの――」
突然のことで沙希が混乱していると、マサが禅の腕を掴んでビルとビルの間に入って行った。
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