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結局、ライブが始まるまで禅と話す機会はなかった。
沙希たちの出番は3番目だった。
前のバンドが終わり、沙希たちの番になった。
前のバンドと入れ代わり、ステージの上でセッティングをしている時、禅と目が合った。
禅は早々に準備を終えていて、沙希の方に歩いてきた。
「大丈夫か?」
禅にそう尋ねられて沙希はキョトンとした。
「え?何が?」
そんな沙希に禅は呆れて大きなため息をついた。
「……お前が緊張なんてするわけないか」
すると、沙希はチューニングをしながらニカッと笑った。
「緊張してるけど、それより楽しみかな♪禅こそ大丈夫?」
沙希の問いかけに、禅は少し口元を緩ませて答えた。
「お前に心配されるほど落ちぶれちゃいない」
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