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だから今回もそうだと思っていた。 その後のメールのやりとりで、夕方に茜のアパートまで行くことになった。 雨の降る中、アパートに着きインターホンを鳴らすと、茜は少し思い詰めた顔でドアを開いた。 「呼び出してゴメンね。……とりあえず入って」 禅は茜の表情を気にかけながらも、促されるまま部屋に入った。 禅が部屋の真ん中に腰を下ろすと、茜はその前に腰を下ろした。 「で、今回はなんだ?」 禅は『なんでもこい』というようにどっしり構えて尋ねた。 しかし、茜はなにも言わず沈黙を保っていた。 「……どうした?ケンカでもしたのか?」 禅はそう言って茜の顔を覗き込むように頭を下げた。
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