過去

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そして禅の胸倉を掴んでもう一度殴ろうとした。 禅の思考の停止した頭は警報を鳴らしていた。 禅は思わずマコトを突き飛ばし、アパートを飛び出した。 どこに行くなんて考えていなかった。 考えられなかった。 ひたすら雨の中を当てもなく走った。 息をするのが困難になるまでひたすら走り続けると、視線の先に公園が目にとまった。 禅はフラフラと吸い込まれるように公園に入っていった。 そしてベンチに座って息を整えた。 雨のおかげでずぶ濡れで、張り付いた服が気持ち悪い。 (……なんでこんなことになったんだろう?) そう問いかけたところで、答えは出なかった。 マコトの怒り。 茜の告白。 マコトと茜の関係。 ただ漠然と不安があるだけ。
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