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禅は空を見上げてみた。 雨は容赦なく降り続け、禅から体温を奪っていく。 禅は寒さで体の感覚がマヒしていた。 それでも、自分の目から涙が流れていることだけはわかった。 ひたすら声を殺して泣いていると、男の声が聞こえた。 「こんなところにいたのか……」 声のした方を向くと、視線の先にマコト、リョウ、ケイゴ、そして佳奈がいた。 マコト、リョウ、そしてケイゴはキッと禅を睨み、佳奈は悲しげに禅を見ていた。 「……禅、佳奈から聞いた」 マコトがそう言った。 禅はキョトンとした。 (佳奈が何を知っているんだ?茜は俺が好きだったって気付いていたのか?) 禅は戸惑いながらそう思っていた。
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