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禅はそこまで話すとタバコに火をつけた。 沙希はそんな禅を戸惑いの表情で見つめていた。 「俺は親も、友達も、……そして仲間も、みんな信じてた。 でも世界は俺を否定した。 神谷 禅って存在ごと全てな」 禅は大きくタバコをはき、言葉を続けた。 「そして誰も信じなくなった。 誰も信じられなくなった。 誰も信じたくなくなった。 ……だから俺は音楽をやめた」 禅は自嘲気味に笑った。 「俺に都合のいい話だったろ? 茜って人間を知ってるマコトたちにはなおさらそうだ」 それまで黙って話を聞いていた沙希がおずおずと尋ねた。 「……この街に来たのもそれが原因なの?」
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