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その問いかけに禅は苦笑した。
「兄貴と結衣さんが心配して手配したんだ。親父たちはあの件以来俺が邪魔だったみたいだから簡単に頷いたよ」
すると、沙希は侮蔑するような目で呟いた。
「……どこの親も勝手だね」
禅は少し驚いて沙希を見た。
「……お前――」
『何かあったのか?』
そう尋ねようとした瞬間、ビルから酔っ払ったマサが出てきた。
「おい、禅!お前も来い!ナオが腕相撲で1人勝ちしてんだよ!」
「今行きま~す!」
沙希はマサに返事をしてビルの方に歩いて行ってしまった。
禅は尋ねる機会を失ってしまったことにため息をついた。
すると、沙希が振り返ってニッコリ笑った。
「禅、わたしは信じるよ。禅が話してくれたこと」
そう言って沙希は駆け足でビルに入っていった。
禅はキョトンとしたが、次の瞬間苦笑して誰にも聞こえないように呟いた。
「……ありがとう」
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