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「……作ってないな」
禅はそう言って無表情でカレーを口に運んだ。
すると沙希がカレーを飲み込んで尋ねた。
「作らないの?」
禅は沙希をチラッと見て、水でカレーを飲み込んだ。
そして、皿にスプーンを置いた。
「……俺はさ、誰かのためじゃないと歌を作れないんだ。
今はもう歌詞が浮かんでこない。編曲ならなんとかなるけど、1から曲を作れない」
そう告げると、禅は目をつぶってため息をついた。
そんな禅に、沙希はニッコリ笑って言った。
「……大丈夫。禅ならまた作れるようになるよ」
すると、禅は苦笑した。
「また根拠のないことを……」
「根拠ならあるって」
ニコニコ笑う沙希に、禅はキョトンとした。
「今、禅はわたしとこうするようになったじゃん。間違いなく、禅は変わってきてるよ」
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