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沙希は禅が渡した上着を見てキョトンとした。
「……禅が着たらいいじゃん」
その言葉に、禅は顔をしかめて言った。
「一度渡した物が返ってきても困るんだよ」
すると、沙希はクスクス笑いながら上着を着た。
「ありがと。でも禅がこういうことするの似合わないね」
沙希がそう言うと、禅は不機嫌そうにそっぽ向いた。
「……悪かったな」
「悪くないよ。……うん、悪くない」
沙希はそう言ってニコニコしながら長すぎる袖をヒラヒラさせた。
禅はそれを視界の片隅に入れると、フンと鼻を鳴らしてタバコに火をつけた。
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