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するとバス停にバスが停まった。
と言っても2人は雨宿りで他に人はおらず、バスから下りてくる人もいなかったためバスはすぐに発車してしまった。
「……雨、やまないね」
沙希がポツリと呟くと、禅はタバコを大きく吐き出して言った。
「急ぎの用事があるわけじゃないし別にいいだろ」
その言葉に沙希はクスッと笑って頷いた。
その瞬間、禅でも沙希のものでもない声が響いた。
「禅!」
突然のことに禅も沙希も驚いて声のした方に視線を向けた。
そこには禅たちより少し年上の感じの女性が、雨の中傘もささずに立っていた。
沙希がキョトンとしていると、禅が持っていたタバコをポロッと落とした。
ジュッという音とともに、タバコが雨に濡れて消えると同時に、禅の口から言葉がもれた。
「……あ………かね……?」
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