月夜

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「何なんだよ、あいつ!」 翔は禅の歩いていった方を見ながら悪態をついた。 「知ったような顔して偉そうに!」 周りの客もうんうんと不機嫌な表情で頷いた。 すると沙希が呟いた。 「……ホントだ」 「はぁ?何が?」 翔が尋ねると沙希は驚いた表情を翔に向けて言った。 「2弦と3弦と5弦、半音ズレてる」 「……マジ?」 翔が唖然として尋ねると、沙希も同じ表情で頷いた。 翔は禅の消えた方を呆然と見た。 その街灯一つない細い路地は、 全てを拒絶するような真っ暗な闇にのまれていた。
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