君の唄が響く丘

好意

すると佐奈は少し真剣な表情になって言った。

「それじゃあ帰る？適当にごまかしておくけど」

「ん？そうか？それじゃあ……」

そこまで言って禅は過去を思い出した。

（そういや昔、茜ともこんなことがあったな……）

そんなことを思って、禅はブンブンと首を振った。

「……いや、帰るのはやめるわ」

禅の中で何かが昔と同じ選択をするのを拒んだ。

そんな禅の答えに佐奈はキョトンとした。

「…………大丈夫？」

「あぁ……」

禅は頷くと、タバコの火を消して立ち上がった。