不覚

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沙希は慌てて禅の右手首を掴んだ。 「ちょっと待ってよ!」 禅は大きなため息をはいて、沙希を睨んだ。 「なんだよ」 沙希は禅の目に一瞬戸惑ったが、意を決して尋ねた。 「禅、音楽やってるんでしょ?」 「……やってねぇよ」 禅は沙希から視線をそらして言った。 そんな禅に沙希は大きな声で言った。 「嘘!じゃなきゃギターのチューニングがズレてたこともわからない!何よりさっきの歌だって歌えないでしょ!」 「嘘じゃない!」 禅は沙希の手を振りほどいて怒鳴った。
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