君の唄が響く丘

隣人

禅は楽譜を受け取ると、興味のなさそうな目で一通り楽譜を眺めた。

「……弾ける？」

佐奈が今さらながら尋ねると、禅は一つため息をついて鍵盤に指を走らせた。

禅は楽譜通りに一曲弾き終えると、佐奈に向かって言った。

「今日１日練習する分には問題ないだろ？」

禅の問いかけに、佐奈はニッコリ笑って頷いた。

「全然ＯＫだったよ。
じゃあ今日はよろしくね」

佐奈がそう言うと、禅は小さく頷いた。

それからしばらくして部員が揃うと、合唱部は練習を始めた。

禅は練習の間、一言も話さずひたすらピアノを弾いていた。