君の唄が響く丘

帰郷

禅が合唱部に顔を出した次の日から、廊下に来ていた女子生徒たちが次第に減っていき、その日の昼休みには１人も姿を見せなくなっていた。

「禅、昼飯食いに行こうぜ」

翔がそう言うと、それを見た沙希も２人のもとにやって来た。

すると禅はバツが悪そうに言った。

「悪いけど先に行っててくれ」

「用事？」

沙希がキョトンとして尋ねると、禅は無言で頷いた。

それを見た沙希と翔は顔を見合わせて首をかしげたが、特に問い詰めることなく教室を出て行った。

禅はそれを見送ると、隣の席に座って教科書を片付けている佐奈をチラッと見た。