帰郷

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慌ててそう言った母の言葉に禅が不機嫌にため息をつくと、母が電話越しに深呼吸するのが聞こえた。 『……禅、一度帰って来なさい。 お正月も、春休みも帰って来なかったでしょう?』 「帰ったってしかたないだろ!? あんたらは俺がいない方が安心出来るんだろ!?」 禅が声を荒げると、母は震える声で言った。 『で、でもね、禅も3年生だし、進路のこととか話さないといけないの……』 その言葉に、禅は舌打ちをした。 「……わかった。土曜日に帰る」 禅はそう言うと、返事を待たずに電話を切った。 「……昔のこと、なにもかもほうっておいて、進路かよ」 禅はそう呟いて舌打ちをすると、そのまま屋上にタバコを吸いに向かった。 沙希と翔はおそらく待っているとは思ったが、どうしても1人になりたかった。
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