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土曜日、禅は電話で伝えた通り実家へ続く道を歩いていた。
この街を離れおよそ9ヶ月ほど。
一度も帰ってくることはなかった。
1年前には当然のように歩いていたこの道を懐かしいと思う。
しかしその懐かしさからくるのは、感慨ではなく苛立ちだった。
道を歩けば見知った顔も目につく。
1年前なら頭くらい下げただろう。
しかし、今はそれをしない。
彼らも禅を見て、目を丸くしては視線をそらす。
噂程度に聞いているのだろう。
偽りの事実を。
それを感じているからこそ、禅は不機嫌になって舌打ちをした。
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