帰郷

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すると、漣は舌打ちをしてソファーに座り直した。 「……俺のせいだな。 俺が中途半端なことをしたから、こんなことになった」 漣の言葉に父が眉をひそめた。 「……どういうことだ?」 父がそう尋ねると、漣は大きなため息をついて言った。 「親父だって禅から聞いただろ? 禅が好きだったのは茜って人じゃなかったんだって」 その言葉に、父は頷いて言った。 「それは聞いた。 だが、誰かという問いには、禅は絶対に答えなかった。 そんなんじゃ信じろというのが無理だ」 すると、漣はそっと目を閉じて言った。 「答えないんじゃなくて、答えられなかったんだよ」
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