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「禅……あの……」
結衣が何を言っていいかわからず、それでも何か言おうと戸惑っていると、禅は苦笑して言った。
「もう昔のことだよ。
今はもう吹っ切れてるから、気にしなくていいって」
禅はそう言うと、立ち上がって漣に視線を向けた。
「……もう帰るわ」
「禅、待て!」
父が慌てて立ち上がって歩き出した禅を呼びとめた。
禅がゆっくりと振り返ると、父は申し訳なさそうに眉を下げて言った。
「今日は泊まっていきなさい」
しかし、禅はその言葉に首を振った。
「……誤解が解けたところで、俺があんたらを憎んでいるのは変わらない」
禅はそう告げてリビングを出ていった。
そして、その禅を呼び止める言葉は誰1人持っていなかった。
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