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電車に揺られ、禅の今がある街に着いた頃には、空は茜色に染まっていた。
禅は終始ただ前を見続けてアパートに戻り、カギをカギ穴にさした時、隣の部屋の扉が開いた。
「あれ……?
禅、家に帰ってたんじゃなかったっけ?」
開いた扉から顔を覗かせた沙希が首をかしげると、禅は苦笑して言った。
「結衣さんが好きだったってバレた。
だからすぐに帰ってきた」
禅の言葉に沙希が目を丸くした。
「えっ、ちょ、どうなったの!?」
沙希が動揺して尋ねると、禅は諦めたようにため息をついて苦笑した。
「親父とお袋の誤解は解けた。
でも、その代わりに兄貴と結衣さんに迷惑かけた」
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