決別

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結衣はその言葉に頷くと、立ち上がって禅に微笑みかけた。 「ありがとう。そして、頑張れ。 わたしは、わたしたちは、何があっても禅の味方だから。 絶対に、ずっとね」 その言葉に禅は笑顔で頷いた。 「分かってるよ。それは俺もだからな。 ほら、いい加減帰らないと、マサさんが酒盛り始めるぞ」 「そうね、帰ろうか」 そう言った結衣の笑顔は、かつて禅が最も好きだった結衣の表情だった。 胸を締め付けられることなくそれを見ることが出来た禅は、苦笑して空を見上げた。 (いつか、また歌を書けるようになったら……今度はどんな歌になるかな……) 見上げた空にある月は半月。 完全な満月ではないその輝きは、 少しずつ満たされ始めた禅の心そのものだった。
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